前回は絵画「フランチェスカ・ダ・リミニ」から「永遠の男女の本質」について投げかけましたが、
この記事では、ウォレスコレクションの代表作ともいえる、フラゴナール作「ブランコ」を考察していきます。
「ウォレスコレクションの艶っぽい絵画と女性の生き方」3回目です。
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艶っぽい絵画3. ブランコ
2階(First Floor) にあるピンクのSmall Drawing Roomを進み、
緑のLarge Drawing Roomを抜け
写真下のOval Drawing Roomに辿り着くと、
ウォレスコレクションの代表作ともいえる、フラゴナール作「ブランコ」にお目見えします。
時は18世紀フランスロココ期。
ブランコに楽しそうに乗る女性は若い貴族のレディ。
後ろからブランコを押しているやや高齢の男性が彼女の夫で、手前左の男性が、彼女の愛人です。
夫にブランコを押してもらいながら、わざと靴を投げ飛ばして脚を上げ、愛人にスカートの中を覗かせて楽しんでいます。
なんて堂々と愉しんでいるのでしょう!
旦那さんの表情は・・?
茂みの向こうに妻の若い愛人がいる事に気付いていない旦那さんは、穏やかに楽しそうにブランコを押してあげています・・。
18世紀フランス淑女の恋愛観
当時のフランスの宗教はカトリックなので、不貞は厳しく罰せられるはずですが、それは庶民の話。
身分の高い女性たちの間では、「恋愛は結婚してからするもの」という暗黙の常識がありました。
それ故に、ロココ期は「愛と恋、エロスに彩られた時代」とも言われています。
「不倫は文化」発言が大バッシングされた20世紀日本ですが、18世紀フランスでは正に「不倫は文化」。
そしてそんな絵画が美術館の代表作として国民に愛されている21世紀イギリス。
かたや法律(民法)において不定行為を禁止し、慰謝料請求までもが可能な21世紀日本。
これは世界にびっくりされる、世にも珍しい法律なのだそう。
話を絵画に戻します。
人間の背景にキューピッド(エロス)の石像が3人いるのですが、それぞれ少し戸惑いながら、指で「しーっ」とでも言うかのように合図を送り合っており、それがいっそう秘密の恋を匂わせています。
ブランコを押している夫ですが、依頼主の要望では「司教」を描いてほしいと頼まれたフラゴナールが、独断で変えて「中高年の夫」を描いたのだそう。
そして女性の放り投げた靴、愛人男性の脱いだ帽子は、宗教から解放された性的な奔放さを表しています。
優雅さが印象的な18世紀フランスの森の中で、自由な恋愛を謳歌する紳士淑女の世界観。
この絵画が今もなお大人気を博し世界中から人が観に来るのには、窮屈な現代に疲れた人の心が関係しているのかもしれませんね。
ルーブル美術館におけるフラゴナールの絵画
ブランコの作者フラゴナールは、18世紀当時のフランスを代表する画家。
フランスの美術管理委員会メンバーで、ルーブル美術館の収蔵品管理も任されていました。
では、ルーブル美術館で観られるフラゴナールの絵画とは。
ルーブル美術館データベースより
「閂(かんぬき)」
フラゴナールが晩年に制作した、後年の彼の代表作。
嫌がる素振りを見せる若い女性を強引に抱き、愛人の男性が閂(ドアの鍵)をかけています。
ひっくり返った椅子(投げ出された脚)、花瓶と薔薇の花(女性の性器の2つの暗示)、かんぬき(男性性を指す)、そしてとりわけ画面の左半分を占めている寝台。これら人間に似た形態が、寝台を場面の主要な役者に仕立てており、あからさまな乱雑さが登場人物の性的衝動を裏付けているのである。
ルーブル美術館より
ルーブル美術館データベースより
「奪われた下着」
天使がベッドで女性の下着を奪い取ろうとしています。
女性は抵抗していますが、どうしてもイヤというわけではないようで、恋を実らせつつある男女のやりとりに通じているという事です。
念の為ですが、フラゴナールは決してエロティックな絵ばかりを描いていたのではありません。
前述したように、彼は18世紀後半のフランスを代表する画家で、宗教画などの「聖愛」と、性的な「俗愛」の両方を描くポリシーの持ち主でした。
ただ、人々にとりわけ受け、強調されて取り上げられているのが「俗愛」の方の絵画なのです。
3回に渡りお届けした「ウォレスコレクションの艶っぽい絵画と女性の生き方」、お楽しみ頂けたでしょうか。
美術館で繊細な美しいタッチと色遣いに魅了されながら、ちょっとスパイスの効いた絵画の背景を思い出して頂ければ幸いです。
ロンドンの貴族の邸宅美術館・ウォレスコレクションで、是非優雅な時間をお過ごしください。
行き方と近隣のお洒落なカフェについては、ウォレスコレクション1.仰天な愛人の生き方とカフェをどうぞ。
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