前回の記事ではルイ15世の公妾、ポンパドゥール夫人の生き方についてご紹介しましたが、
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艶っぽい絵画2. フランチェスカ・ダ・リミニ
ウォレスコレクションを入って右手すぐの部屋に、「フランチェスカ・ダ・リミニ」(アリ・シェフェール作)は飾ってあります。
政略結婚のもとに騙されたフランチェスカの悲恋の絵画。
フランチェスカはダンテの「神曲」地獄編に登場するイタリア人女性です。
ある日フランチェスカの父は、マラテスタ家との戦争を終わらせるために、政略結婚として娘のフランチェスカをリミニの領主へ嫁がせることにします。
しかし、顔が醜く脚が不自由、性格にも難があった領主にフランチェスカは嫌悪を感じ、それを感じ取った父親は、なんと結婚式に領主のハンサムな弟・パオロを花婿代理人として出席させ、まんまと騙されたフランチェスカは結婚に応じ、パオロと恋に落ちます。
結婚式の翌朝に騙されたことを知ったフランチェスカ。
既に惹かれ合ってしまった二人は、政略結婚をわきまえて気持ちを抑えようとしますが、ある日領主が出掛けている間に2人で会い一緒に本を読んでいたところ、パオロはフランチェスカを引き寄せて不意にキスをします。
運の悪い事にそのタイミングで帰宅し、それを見てしまった領主は怒り狂い、二人を剣で刺し殺します。
絵の中で裸で抱き合っているのは、殺されてしまった後の二人の魂。
右側でそれを見ているのは、絵画の題材となった「神曲」作者のダンテと、ダンテの師匠・ウェルギリウス。
詩人のダンテとウェルギリウスが地獄を歩き、愛欲にまみれた行き場のない恋人たちの魂が彷徨う様子を見ている時に、パオロとフランチェスカに目が留まりました。
純潔な魂の愛となった肉体的な愛は、清らかで、ゆえに詩人たちは辛くも優しい哀れみを感じ、永遠に心を痛めているのである。
ルーブル美術館HPより
ルーブル美術館の「パオロとフランチェスカ」
実はこの絵画、ウォレスコレクションの他に、ルーブル美術館にもあります。
ウォレスコレクションに展示されている「フランチェスカ・ダ・リミニ」は1835年の初版で、同画家が20年後に同じ絵を描いたものがルーブル美術館に展示されているのですが、そちらのタイトルは「パオロとフランチェスカ」。
ルーブル美術館データベースより
ウォレスコレクションの「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、生で観るとえぐれた傷口がとても痛々しく、強烈な印象があったのですが、ルーブル美術館の方は、傷が火傷の跡?と見まがうような、控えめな表現になっています。
ルーブルの方は、2人の魂が白くふんわりとしていて、まるでこれから天国に行くかのよう。
けれども、そこには衝撃的な説明が。
男女の永遠の本質
死を越えた愛情
人間の本質に関する永遠の真実が完全に理解される。男が自己中心的な絶望の叫びを発しているのに対し、女の唇からは、彼女を深淵に引きずり込んだにもかかわらず、彼女が死を越えて愛する者に対する、限りない愛着のため息がもれている。もし男が目を開いたとしても、その視線が彼女に注がれることはないだろう。逆に女が瞼を上げれば、そのまなざしは彼だけしか見ないだろう。男は自分自身の苦悩と必死に戦っている。女は、自己犠牲の奇跡によって、自らの苦悩を少しも感じず、他者の苦しみだけが彼女を苦しめる。
ルーブル美術館HPより
つまりこういう事です。
道ならぬ恋により罰を受けた時、男は絶望し、自分の事でいっぱいいっぱいで女の事など考えもしないが、女は自分の苦しみ以上に相手への愛情で溢れている。
それが永遠の人間の本質である、と。
美術館に堂々とそんな説明が~!!
フランチェスカは、愛するパオロの絶望に苦しんでいるのだそう。
それは本当に永遠の本質なのでしょうか。
それとも、男性画家の思い描いた理想でしょうか・・。
チェス太はそれが本質だと良いなと思います。だって、その方が幸せじゃないですか?女性としては。
死ぬときに深く愛したことを思い出せたなら、自身への誇りと共に幸福を感じられるのではないでしょうか。
そして人間を産み育てる性として、是非ともそんな深く大きい愛情を持っていたいものです。
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Wallace Collection
Hertford House, Manchester Square, London
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