「コートルード美術館展」東京/名古屋/神戸で2019秋~開催!見どころを解説

コートルード美術館展東京、名古屋、神戸、印象派、モネ、フォリー=ベルジェールのバー ロンドン芸術




こんにちは。チェス太@chestalondonです。

2019年9月から東京都美術館で開催される「コートルード美術館展」。

モネやセザンヌ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャンなど、世界有数の印象派コレクションが一挙に集まる展覧会で、日本で見られるのは22年ぶり。

東京の後は、名古屋(栄)、神戸へ。

2018年12月にロンドンのナショナルギャラリーで鑑賞したので、一足お先に内容をお伝えすると共に、見どころ作品の解説をします。

「コートルードの印象派たち:マネからセザンヌまで」展
英国ナショナルギャラリーにて、2019年1月20日まで。




「コートルード美術館展」の内容をざっと掴む

ナショナルギャラリーによる「コートルードの印象派たち」


National Galleryより

1月までロンドンのナショナルギャラリーで開催されていたコートルード展と、2019年秋~東京、2020年~名古屋、神戸と巡回するコートルード展の内容は大方同じなので、まずは30秒のこちらの動画をどうぞ。

ただ、チェス太が個人的にすごく良いと思った、「モネ」の充実した絵画群が動画には入っていないので、コートルード展の魅力をお伝えするのにこれでは少し物足りないです・・。

コートルード展(印象派展)の予習・復習にぴったりな本が発売されています↓↓





東京都美術館のコートルード展イチオシ目玉絵画

マネ フォリー=ベルジェールのバー コートルード美術館展
コートルードギャラリーより
A Bar at the Folies-Bergère
Édouard Manet

コートルードコレクションから、マネ最晩年の傑作
《フォリー=ベルジェールのバー》
来日決定!
コートルードJPより)

東京都美術館によると、コートルード展の目玉絵画はモネの「フォリー=ベルジェールのバー」

チェス太
国によってメインとして扱う絵画が違うのが面白いですね。

フォリー=ベルジェールのバーの背景

フォリー=ベルジェールは、1869年にオープンしたパリのナイトクラブで、キャバレーやバレエ、サーカスも開催され、賑わった社交場でした。

バーテンダーの女性の表情が少し暗鬱としているのが気になりますね。

実はフォリー=ベルジェールは売春婦を買う場所としても有名であり、このバーテンダーさんも、お酒と共にお客さんに買われる売春婦である事が、お皿に入ったオレンジによって表されています。

そうしたパリ社会の裏面を、絵画を通してモネは表現しました。

コートルードギャラリーによる、フォリー=ベルジェールのバーの解説動画

コートルードギャラリーの美術館員による解説動画が非常に深く良かったので、宜しければどうぞ。

英語で長い説明を受けると、途中で違う事を考え出してしまいがちなチェス太ですが、日本語字幕設定にして見たらリスニングの助けになり、最期まで集中して解説を聴けました。





コートルード美術館展の見どころ作品

ここからは「フォリー=ベルジェールのバー」以外の、コートルード美術館展での見どころ作品を挙げます。

ドガ「舞台の二人の踊り子」

ドガ 舞台の二人の踊り子 コートルード美術館展
Courtauld Galleryより
Two Dancers on the Stage
Edgar Degas

フランス人画家ドガによる「舞台の二人の踊り子」。
ドガは19世紀後半から20世紀前半のフランスを代表する絵画の巨匠で、バレエを題材にした作品でよく知られており、「動き」を表現するのが得意。

この絵画の舞台はオペラ座で、ドガがオペラ座の会員であったため、練習風景などを舞台袖から見て描いていました。

踊り子たちは労働者階級で、ドガはその層に大きな関心を寄せていたという事です。

チェス太
「舞台の二人の踊り子」は、昔美術の教科書で見た時には特に何も感じませんでしたが、今回本物を前にして、すごく惹きこまれてしまいました。
踊り子たちの前側にかなり大きなスペースの余白がありますが、本物をよく見ると、この余白のタッチが、立体・奥行き感を表していて素晴らしいのです。

踊り子の表情も非常に可愛らしいので、是非印刷ではなく、本物をご覧頂きたい一枚。

ドガは1874-1886年の間、フランスでの印象派展を企画するリーダーとして活躍していたため、絵画の印象派を語るうえでは欠かせない存在なのですが、彼自身は自分を「印象派」と呼ばれるのを嫌がり、「写実主義」だと主張していたようです。




モネ 秋の効果 アルジャントゥイユ


Courtauld Galleryより
Autumn Effect at Argenteuil
Claude Monet

モネはフランス人画家で、フランスの田舎をこよなく愛し、自然風景に対して自分が認識した表現を描くという、正に印象派の画家。

この「秋の効果 アルジャントゥイユ」では、セーヌ川から見たアルジャントゥイユの町を描いています。

水平に走っている太い青いストライプは川の流れ。
その背後には、工場の白い煙突、家屋や教会があり、工場が出す白い煙は雲と合わさっています。

しかし、モネの関心は近代都市よりも、水面の反射、樹木の色の変化(オレンジやピンク、紫、緑など)に大きく注がれており、秋の季節を強く感じる一枚です。

モネ アルジャントゥイユのセーヌ川岸

モネ アルジャントゥイユのセーヌ川岸 コートルード美術館展
Courtauld Galleryより

「アルジャントゥイユのセーヌ川岸」は、おそらくモネが最も印象主義を探求しようとした絵画であろうと言われています。

モネは、パリの郊外にある急速に発展している町・アルジャントゥイユに住んでいました。

絵の中の女性と子どもは、モネの妻のカミーユと、息子ジーン。

明るい色と速いタッチで、夏の陽の光や波紋を活き活きと表現しています。

モネ アンティーブ


Courtauld Galleryより

「アンティーブ」

1888年の春から、モネはフランス南部のアンティーブで、数か月間かけて絵を描きました。

絶え間なく変化する気象条件で苦労しましたが、光と風の動きを表現するのに一生懸命に取り組んだ作品。
強く対照的な色を使い、地中海の光と色の強さを捉えています。

「私がここから持ち帰るのは、ピンク、白、ブルーの魔法のような空気に包まれた甘さそのものだ。」
と、モネは書き残しました。

また、この絵の構成は、モネの日本の版画に対する関心が反映されています。




セザンヌ カード遊びをする人々

セザンヌ カード遊びをする人々 コートルード美術館展
Courtauld Galleryより
The Card Players
Cezanne Paul

「カード遊びをする人々」は、セザンヌの要の絵画と言われており、1894年から1895年にかけて、晩年のセザンヌが描いた代表作。

「カード遊びをする人々」は世界に5点存在していて、そのうちの一枚はカタールの王族に売却されましたが、その額推定3億円。
売却された絵画の中では世界一高額な一枚となりました。

残りの3枚は、ニューヨークのメトロポリタン美術館、パリのオルセー美術館、フィラデルフィアのバーンズコレクションに所蔵されています。
パイプをくわえてカード遊びをするのはプロヴァンスの農民。

17世紀オランダやフランスでは、こういった賭け事をテーマにした絵が、酒やギャンブルに明け暮れる、騒々しい感じの風俗画として描かれるのが定番でした。

セザンヌはそれらとは一線を画し、商売人の表情は仏頂面、金も酒も描かず簡素に、ドラマ性を排除した絵に仕上げています。

セザンヌの描いた農夫たちはモデルとして実在しており、寡黙な彼らは静かに集中してカードゲームを楽しみ、それがコミュニケーション手段でもあったようです。

セザンヌ パイプを持つ男

セザンヌ パイプを持つ男 コートルード美術館展
Courtauld Galleryより

「パイプを持つ男」は、上に挙げた「カード遊びをする人々」に描かれているプロヴァンスの農夫の一人。

「カード遊びをする人々」を描くための下絵として描いたものですが、それ自体が一つの作品として高く評価されており、「セザンヌの最も優れた肖像画」と言われています。

セザンヌ 大きな松のあるサント=ヴィクトワール山


Courtauld Galleryより

大きな松のあるサント=ヴィクトワール山

サント=ヴィクトワール山は、セザンヌの故郷、エクス・アン・プロヴァンスの東側に立っています。

セザンヌは、生涯においてたくさんの山を描きました。
そして山の絵画は彼の故郷であるプロヴァンスの風景の象徴になっています。

技法としてこの絵画では、松の木の左側と上の方しか見えないように眺めが切り取られており、松の枝は、サント=ヴィクトワール山の輪郭に沿っています。

そうして平野の小さな部分に焦点を当てることによって、遠くの山がより近くに感じられ大きく見えるのです。




ゴーギャン テ・レリオア(夢)

ゴーギャン テ・レリオア(夢)コートルード美術館展
Courtauld Galleryより
Te Rerioa
Gauguin Paul

フランスのポスト印象派の巨匠、ポール・ゴーギャンの一枚。

「テ・レリオア(夢)」は、ゴーギャンのタヒチでの2度目の滞在中に描かれました。

精巧な木製のレリーフで飾られた部屋に、眠っている子どもを見守っている2人の女性。

ですがこの2人の女性はコミュニケーションを取っておらず、ゴーギャンは意図的にこの絵に謎を残しつつ、こう書き残しています。

「このキャンバスの中の全てが夢です。子どもの夢?お母さんの夢?道路にいる馬に乗った人の夢?
もしくは画家である自分の夢・・!?」

ゴーギャン ネヴァモア

ゴーギャン ネヴァモア コートルード美術館展
Courtauld Galleryより

ネヴァモア

横たわっている女性は、ゴーギャンのタヒチでの妻(結婚した時14歳)。

後ろにいる二人の人物と、監視し続ける悪魔の鳥(ゴーギャンがそう呼んだ)は、ゴーギャンの妻を罵倒しているようです。

彼女は起きていて、見られていることに気付いています。

この絵でゴーギャンは、愛や純粋さを失ったことを表現しています。

ゴーギャンは、原始的で素朴な楽園を追い求めてパリからタヒチに移住しましたが、今では深く失望しています。

楽園どころか、タヒチは植民地主義によって腐敗した社会だったのです。



ルノワール 桟敷席

ルノワール 桟敷席 コートルード展
Courtauld Galleryより

桟敷席

ルノワールの弟エドモントと、魚顔で知られていたモデルのニニ・ロペスが、劇場のボックス席で観劇しています。

エドモントは双眼鏡で他のお客さんを覗いています。

ニニの双眼鏡は手に持たれており、見られていることを意識してか、少しだけ視線をずらしています。

桟敷席は、1874年に印象派の最初のグループ展に参加しました。

ファッション業界の危険な誘惑だとして女性を批判する声もあれば、彼女の優雅さを称賛する声もあり、批評家の意見は真っ二つに分かれました。




まとめ

日本でのコートルード美術館展

2019年9月10日~12月15日に東京都美術館で開催される「コートルード美術館展」では、モネ、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、ドガ等、華麗な印象派画家の絵画が集まります。

これらの絵画が日本に来るのは22年ぶり。

東京都美術館で開催の後、2020年に愛知県美術館神戸市立博物館を巡回予定。

イギリスでのコートルード展

イギリスでのコートルード展は、現在ナショナルギャラリーで開催中で、2019年1月20日まで

入場料£7.5(ナショナルギャラリーのメンバーは無料)

パリでのコートルード展

パリでのコートルード展は、ルイヴィトン財団ギャラリーで、2019年2月20日~6月17日まで。

 

ロンドンのコートルードギャラリーが改装中の間、印象派の素晴らしい絵画たちが世界を巡るので、この機会にぜひご鑑賞頂ければと思います。

以上、「コートルード美術館展東京」の概要と見どころの解説でした。

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